横浜の汽車道が好きな理由
以前に行った横浜の都市デザインスポットを歩き回る一人旅の中でひときわ気に入ったのは、歩行者プロムナードの「汽車道」でした。汽車道は桜木町駅前からみなとみらい21新港地区につながる鉄道遺産を保存し歩道に転用した歩行者プロムナードです。
私が汽車道を気に入った理由は、鉄道遺産の保存と活用へのこだわりを感じ、水辺の景観を楽しむことができ、人の往来で活気があるからです。
もとの鉄道路線は明治時代に敷設され、1990年代にはその役割を終えたそうです。その後、みなとみらい21新港地区再整備の中、老朽化した線路と護岸、海外製のトラス橋を撤去せず保存、活用したことで今の汽車道があります。さらに、汽車道から赤レンガ倉庫への繋がりにもこだわりがあったようです。大きい点で言うと赤レンガ倉庫への見通し確保ののため、建物内にトンネルを作っちゃってます。そこまでするか。(逆にそこまでしてそこに建てたかったのか。)小さい点で言うと、そのトンネルの先の広場にもわずかに残った鉄道跡を残すことで、赤レンガ倉庫へのつながりを演出しています。
汽車道は2つの人工島とその間をつなぐ橋で構成されているため、横浜らしい水辺の都市景観に囲まれた水上散歩を楽しめます。水辺の周囲をみなとみらい21中央地区、北仲通地区の街並みや日本丸、コスモワールドの観覧車に囲まれ、ここを歩くだけでもかなり横浜に浸れます。このあたりの景観に嫌な感じがないのは都市デザイン50周年のたまものといったところでしょうか。上空のYOKOHAMA AIR CABINも新たな景観として馴染んでいるように私は感じました。(平日だったからか乗客がエアーなキャビンだったのは気になるところ。)さらに夜間になると各所ライトアップされ、きらびやかな水上散歩を楽しむことができます。
私が見た限り、平日、休日問わず汽車道は人の往来が盛んで、これは動線に起因する必然性もあるのだと思います。汽車道は桜木町駅から、みなとみら21新港地区を結ぶ最短の歩行者ルートです。新港地区には赤レンガ倉庫、カップヌードルミュージアム、コスモワールドといった観光施設やワールドポーターズ、ハンマーヘッドといった商業施設があるため、そこを歩く目的が複数あるわけです。さらに、横浜市では桜木町駅から港の見える丘公園に至る約3.5kmの歩行者ルート「開港の道」を形成しています。開港の道を使えば、赤レンガ倉庫、大さん橋、山下公園、港の見える丘公園といった港に面した主要な観光地は快適に歩いて網羅できます。汽車道はその起点に位置しています。汽車道は歩いて行く先に目的があり多くの人が往来しているため、より歩いて楽しい雰囲気が創出されているのではないでしょうか。
汽車道は鉄道遺産へのこだわりを感じ、みなとみらいの水辺の景観を楽しめる桜木町駅から新港地区へのアクセスルートという点で、これぞ歩きたくなる歩行者プロムナードと呼べる場所でした。